知れば、もっとおいしい。
れんこんは、植物のどこ? なぜ穴がある? なぜ岩国の蓮根は「9つの穴」と呼ばれる?
農家の私たちが、お客様からよくいただくご質問にお答えします。
答え:「根」ではなく、「地下茎(ちかけい)」。
水中の泥の中で、節をつなぎながら横に伸びていく茎です。
蓮(ハス)の花の下、水中の泥に育つのがれんこん(地下茎)
夏のあいだ、池や蓮田にうかぶ大きな葉と、薄桃色や白の蓮の花。その水面下、泥の中で太くしっかり育っていく茎が、私たちの食べる「れんこん」です。
あの穴は、ただの飾りではありません。水中で生きるための「呼吸パイプ」です。
葉から吸い込んだ空気を、長い茎を通じて泥の中の地下茎まで届ける、植物の知恵。蓮は水底という空気の少ない場所で育つため、こうした通気組織(つうきそしき)を発達させたのです。
れんこんは、1年がかりで育つ農作物。
4月の植え付けから始まり、夏の花を経て、秋から冬、そして翌春までゆっくり収穫が続きます。

前年の蓮田から取り置いた「種れんこん」を、泥の中にひとつずつ手で植え付けていきます。芽を折らないよう、また芽の向き(伸びていく方向)を揃えて、ていねいに。一本一本、手の感覚をたよりに進める仕事です。

水の中で芽が伸び、やがて葉が水面に顔を出します。日に日に田んぼが緑のじゅうたんに変わっていきます。

早朝、薄桃色や白の蓮の花が一斉に開きます。岩国れんこんは「白花種」と呼ばれる、白い花を咲かせる品種です。

葉が枯れ始める9月から収穫スタート。最盛期は11〜2月。寒さで甘みが増し、もっちりとした食感に育つ冬のれんこんが特に美味です。
※ハスの中村では、収穫の最盛期にあわせて9月〜翌3月ごろに出荷しております。
1株のれんこんは、道 → 親(3〜4節) → 芽の順番で一直線につながって育ち、さらに親の節から「枝」が伸びていきます。
ハスの中村では、産地に伝わる呼び方で「親」「枝」「芽」「道」と呼んでいます。
※イメージ図
芽
親
枝
道
中央の太い 3節が親、先端のとがった部分が 芽、右端の細い節が 道、横に分岐しているのが 枝 です
一番先端、新しく芽が出ている柔らかい部分。みずみずしく、希少。薄切りにしてサラダや酢の物、素揚げ、天ぷら、お味噌汁の具など、やわらかさを活かした繊細な使い方で香りと食感を楽しめます。
株の中央、もっとも立派な3〜4節。繊維が密でもっちりとした食感、れんこんの一番おいしい部分。煮物・揚げ物・きんぴらから、サラダ・酢の物・れんこん餅まで、どんなお料理にも合う万能な部位です。
親の節から横に伸びる分岐の節。中央のふっくらした部分が食べ頃で、もっちりとシャキシャキの両方を楽しめます。きんぴら、煮物、はさみ焼きなど、幅広い料理に使えます。
株の末端や、枝の根元の細い部分。やや空洞が大きく繊維が硬めですが、すりおろして「れんこん餅」や「しんじょ」に。もちもち食感が生きる加工向きの部位です。
肥大した節と節の継ぎ目。掘り取りや出荷では、ここを区切りの目安にします。節の中にも穴が通っているのが、れんこんの不思議。
昔から「節には栄養がぎゅっと詰まっている」と言い伝えられてきた部分。タンニンやビタミンCを含み、すりおろした絞り汁は、おばあちゃんの知恵として、季節の変わり目やのどがイガイガする時のお手当てに親しまれてきました。
岩国れんこんは、よく「9つの穴がある」と紹介されます。
少しだけ、ていねいにお話しさせてください。
岩国れんこんの断面。外周にぐるりと並ぶ穴が、岩国れんこんの特徴です
れんこんの穴は「外周の穴 + 中央の穴」で構成されています。一般的な蓮根は「外周8つ+中央1つ=計9つ」が多く、岩国れんこんは「外周9つ+中央1つ=計10つ」になることが多い、というのが正確なところです。
「9つ」と呼ばれているのは、外周の穴の数を数えた呼び方として定着しています。
ただし、穴の数は品種・育ち方・個体差でばらつきがあります。「岩国だけが9つ」というよりは、「外周9つの穴があらわれやすい系統(白花種・門前バス)」が岩国に多く伝わっている、と理解いただくのが正確です。
外周9つの穴のかたちが、岩国藩主・吉川家の家紋「九曜紋(くようもん)」に似ていることから、藩主にも喜ばれたと言い伝えられています。
また、穴が長くつながっていることから「先が見通せる・見通しがよい」と縁起をかつぎ、お正月やお祝いの席に使われてきた、おめでたい食材です。
※「九曜紋との縁起」は地域に長く伝わるお話で、史料で年代まで確定したものではありません。地元の言い伝えとして、ご家族でお正月の話題にしていただけたら嬉しく思います。
お正月のおせちに、縁起をかついで
岩国でれんこん栽培が始まったのは、江戸時代・寛政8年(1796年)。
いまから230年ほど前のことです。
岩国・尾津の蓮田。錦川河口の干拓地に咲く、白い花の蓮(白花種・門前バス)
岩国領主・吉川公の命を受けた篤農(とくのう)・村本三五郎が、備中(現在の岡山県)から種ばすを持ち帰り、岩国・門前地区に植えたのが始まりと伝わります。このため、岩国れんこんは古くから「門前バス」とも呼ばれてきました。
岩国れんこんの主産地である尾津(おづ)の干拓地は、もともと海を干拓して作られた土地で、塩分が残り稲作が難しい場所でした。そこに、塩害に比較的強く、栄養豊富な泥土を好むれんこんがぴったり合った──土地の不利を、れんこんが救った形です。
明治時代には白花種(しろばなしゅ・現在の主品種)が中国から導入され、大正期から岩国の主品種として定着しました。今も岩国市内では約170ヘクタールの蓮田で、れんこん栽培が続けられています。
中村家は、祖父・英治の代から二代、五十年。受け継がれた「贈る心」と、230年の歴史の上に、一本一本ていねいに育てています。
れんこんは、切り口から空気にふれるとアクが出やすい野菜。
状態に合わせた保存をすると、最後までおいしく召し上がれます。

濡らした新聞紙で包んで、ポリ袋に入れて野菜室へ。約1週間。
ハスの中村のれんこんは土付きでお届けします。すぐに使わない分は、洗わずにこの方法で保存してください。乾燥に弱いので、新聞紙はやや湿らせるのがコツです。

ラップでぴったり包み、冷蔵庫の野菜室で4〜5日。
洗ってしまった分は、空気にふれないようラップで密閉。土付きより日持ちは短くなります。

切り口をラップで密閉、または水に浸して冷蔵で約1週間。
切り口の変色を防ぐため、酢水(水1リットルに酢小さじ1)に5分ほどさらすと白く保てます。水に浸す場合は毎日水を替えてください。
※水に浸すと栄養が少しずつ流れるため、お早めにお召し上がりください。

すりおろし、または薄切りにして下茹で → 冷凍で約1ヶ月。
すりおろしはハンバーグや味噌汁にそのまま。薄切りはきんぴらや煮物にすぐ使えて便利です。